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パパはかわら版

第4章 パパはかわら版C

橋龍「君は、ほんとによく飲むね」
祐子「そうですか。飲むのが仕事ですよ」
橋龍「そりゃ、そうだろうが。体に悪いだろう」
祐子「橋龍さんも、この間は、かなり酔っていたじゃないですか。私は、飲むことは飲みますが、あんな風にはなりません」
橋龍「よくいうよ。私は君と最初に飲んだとき、圧倒されて、全く酔わなかった。あまりそういったことはない」
祐子「私はね、今までも、いろんな店で、飲めるだけ飲んで、追い出されたりもしました。それでも、いいんです。またこうして、ここで飲めるんですから」
橋龍「そういったって、君だって、結婚して、子供を作ってという夢だってあるだろう」
祐子「結婚ですか。それってあれですか」
橋龍「あれって、なんだい」
祐子「誘ってるんだ」
橋龍「いや、そういうんじゃないよ。一般論だよ」
祐子「一般論」
橋龍「うん」
祐子「またあ。そういうしんみりした話はしないでくださいよ」
橋龍「私は、いろいろな子を見てきたけど、ある程度の年になったら、この商売から足を洗って、みんな結婚していくよ」
祐子「それは、人は人ですよ。私の面倒でも見たいんですか」
橋龍「いやいや、私にそんな甲斐性はないよ」
祐子「それも寂しいですね」
橋龍「何だい、君はそういう関係を望んでいるの」
祐子「さあ」
橋龍「君は、昼間は何してるの」
祐子「何って、なんにも」
橋龍「なんにもって」
祐子「寝てるだけ」
橋龍「一日中」
祐子「一日中ってことはありませんよ。仕事に来ているのに」
橋龍「それだけ」
祐子「そうですよ」
橋龍「そんなことないよ」
祐子「ほんとですよ」
橋龍「それは、おかしいだろ」
祐子「まあ、いいじゃないですか。飲んでくださいよ」
橋龍「信じられないね、君の言うことは」
祐子「私はいいんです。このまま、どこにも雇われなくなるまで、この商売で食っていきます」
橋龍「それができなくなったら」
祐子「何も考えてません」
橋龍「いい加減に生きてるね」
祐子「私の生い先どうでもいいじゃないですか」
橋龍「いや、心配だね」
祐子「大丈夫ですよ。橋龍さんに捨てられたなんて書き置きして、身投げなんかしませんから」
橋龍「確かに、そりゃ困るね。瓦版としては」

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