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パパはかわら版

第5章 パパはかわら版D

客A「よう、ねえさん。私ら、ねえさんの一言でどうにでもなるやからではないよ。喧嘩うってんだったら、考え直した方がいいな」
礼子「なにいってんだい。もてないからって、喧嘩してんのはあんたじゃないか。女中だって、気があるんだったら、ほうっときはしないよ。あんたみたいにしつこい客は、私でも嫌だね」
客A「なにぃ。いっていいことと悪いことがあるわ、姉ちゃん」
礼子「そんな、分別があるようには見えないね。あるんだったら、出ていきなさいよ」
客A「てめい、もうゆるさねえぞ」
だんだん険悪になっていくのを見て、客Bが場をおさめることにした。

客B「悪かった、悪かった、亭主。俺も、ちょっと、機嫌悪くてよ。こんなことになっちまった。俺も帰るから、お前もかえんな。このあたり評判落としていいことあねえわあ。なあ、今日のことは、俺が謝ることにしとく。それじゃなあ、亭主、また、よらせてもらうよ」
客Aも、一言、二言いい残して、渋々帰っていった。周りから小さな拍手が起きたが、客Aが睨んだので、その拍手は、すぐにおさまってしまった。亭主が、済みませんでしたとわびを言って、また、営業が始まった。橋龍は、一部始終を見ているうちに、もちろん、酔いが少し醒めてしまった。

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