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パパはかわら版

第5章 パパはかわら版D

橋龍は、今日は、でろんでろんになる前に、帰った。もう子供たちはすでに寝ていた。というより、橋龍はそんなのは気にもしなかったので、起きているのかも寝ているのかも実際は分からなかったが、家の明かりが消えているのだから、寝ているとしか思わなかった。江戸は、冬になると、火事が怖かった。一度火がつけば、あっという間に広範囲に広がるのは、木造建築である以上当然だった。橋龍は、細かいことに口うるさかったが、そのなかでも、火事だけは起こすなというのは、親というか、主としては当然、子供には言わなくてはいけなかった。そんなの分かっているとは言うが、どうも信用はできなかった。台所は、土間になっているので、そこから火が広がるとは考えづらかったが、照明だけは、気をつけなくてはいけなかった。暗くなったら、もう寝ろとまで言っていたが、さすがに、日が短いのにそんなことはできるはずもなく、良江と幸江は勉強をすることもあった。初江は、あまり勉強は好きではなかったが、3人の内、2人がやっていたら、自然とやるはめにはなっていた。ただ、かなりいい加減だったとはいえる。次の日の朝、子供たちは、いつも通り、橋龍より先に起きていた。時々は、3人は、朝から掃除したりもしたが、橋龍にはうるさいから、朝はやるなと言われていた。弁当が、木野屋から運ばれてくるのは、寺子屋に行く、一時ほど前だった。橋龍も、その時間には大体起きるのだが、飲みに行ったときは、起きてこないときもあった。二日酔いのときは、平凡屋にいく寸前まで横になっていることもあったのだ。それでも、今朝は、深酒をしなかったので、弁当が届いて、一緒に食べた。

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