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パパはかわら版

第5章 パパはかわら版D

初江「それにしても、どうしたんだろう。パパ」
幸江「ええ、なにが」
初江「なんか、怒ってたのに急に静かになっちゃって」
良江「そうでしたね」
幸江「ほんとうは、なにか隠してるんじゃない。初江ちゃんのおばさんとの話」
初江「違うよ。私は、良江ちゃんの話が効いたんだと思うよ」
幸江「そうかな。確かにパパは、情にはもろいけどね」
初江「そうだよ」
良江「私の話ですか」
初江「あんた、話がうまいわ」
良江「別に、私はほんとうのことを言っただけですよ」
初江「よく言うよ。あのあんたのお母さんの話、あれは使えるよ。ああいう話に弱いのよ」
良江「だから、あれは本当の話で、作り話ではありません」
初江「そんなのはどうでもいいよ。とにかく、パパの弱点が見つかった」
もちろん、橋龍は、自分の子供である初江を母親が捨てたということと同じことを、初江から聞いたために、おとなしくなってしまったのだ。確かに、良江の話も可哀想な話だが、大体いつも同じようなことばかりしか言わないのだから、またはじまったという程度の話だ。初江自身は、まだ自分がおばさんに育てられたとおもっているのだから、しょうがないのだが、真実を知ったら彼女も驚くだろう。というより、一生聞かない方がいいような話だ。

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