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パパはかわら版

第5章 パパはかわら版D

左吉「どうやら、幕府は米相場に介入するようですね」
橋龍「それは当然だ。これ以上つり上がったら、庶民生活は成り立たない」
諭吉「しかし、どうだろうね。財政も厳しい。特に、勘定方があの始末では、貨幣を新しく作るしかないだろう。そうなれば、また米の値段も上がる」
橋龍「元は、景気の善し悪しじゃない。勘定方の体質だ。あそこが変わらなければ、いつまでも同じだ」
左吉「勘定方の話だったら、佐野様の話は聞いてますか」
諭吉「ああ、聞いてる。勘定吟味役のほうで、もめてるようだね」
左吉「どうやら、何人かが騒いだようですね。それで、佐野様が意見したそうです」
諭吉「中間管理職はきついね。部下の突き上げを聞かなくちゃいけないんだから」
橋龍「勘定吟味役が中間管理職ということはないんじゃないか」
諭吉「そんなことはない。大名というわけではないんだ。旗本が勘定方や老中相手に立ち回るなんて言うのは、あまりにも可哀想な話だ」
左吉「どうやら、謹慎のようです」
橋龍「そんなことになったのか」
諭吉「酒井大老の耳にも入ったろうね。となると、更に厳しい処分もあるということか。嫌な世の中になって行くな」
橋龍「それでも、もっと酷いのは、こういったことが公にならないということだ。厳しい処分を受けても、時がたてば誰もが忘れてしまう。それも、多くの庶民はほとんど知らないままだ」

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