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パパはかわら版

第5章 パパはかわら版D

諭吉「しかし、残念だが、私らにはどうにもできない。勘定方でもめても、口出しできるのは、金の使い方ぐらいのものだ。それも、使途不明といっていい金には一切口出しができない。結局は、大老と老中、御三家の力関係が変わらない限り、状況は変わらないと言うことだ」
橋龍「情けない話だ。何のために将軍職はあるんだ」
諭吉「病弱なんだからしょうがない。ただ、ここにきて幕府内でも、意見が出るようになっただけでも、状況が変わる可能性はある」
左吉「果たして、そうでしょうか。酒井大老は、僅かな期間で、幕府を牛耳った人物です。それも、改革にも貢献して評判が高かった、阿倍様を追い出し、御三家にすらも口出しさせなかった。更に商人と結んで、自らの地位を安泰させました。これぐらいで揺るぐとは到底思えません」
橋龍「そんな世の中じゃ困るんだよ」
諭吉「そうだがな。しかし、酒井大老を愛妻家だのと、持ち上げる連中もいる」
橋龍「バカなこと言うな。愛人がいるうえに、家臣の妻を取り上げたような人間だ。相手の意見をよく聞くという話も聞いたことがあるが、それは、都合の悪い人間を見分けているだけだ。どれだけの人間が、左遷されたと思っているんだ。彼に睨まれたら、もうここではやっていけないんだよ」

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