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パパはかわら版

第5章 パパはかわら版D

藩校でも、専門を学べたが、江戸で学問を学ぶなら、有名私塾にいくというのは、普通だった。もちろん、3人は侍の子でもないし、男子でもない。ただ、この時代になると、寺子屋で教える女性も増えたので、女子の通うことのできる私塾というのも増えたのだ。そういったところは、ほとんどが、女子だけのところだったが、共学のところもごく僅かだがあった。もちろん、地方となると、女性がこういった分野で活躍することはほとんどなかったが、江戸では、何のハンデもなかったのだ。良江は、有名私塾を目指すわけだが、幸江はといえば、普通だったら、上の寺子屋に行くのだろうが、ただ、ここの家は、複雑な事情があるので、どういったことになるのかは分からない。橋龍が、自分の娘と認めるのなら、恐らく幸江は、更に上の寺子屋に通うことになるだろう。では、初江はというと、どうも、彼女の言動からすると、これ以上学問をしようという気はないらしい。となると、どこかに奉公にでも出て、女中にでもなるかだが、ただ、橋龍の家で家族として生活するとなると、また話は違ってくるかもしれない。なんと言っても、橋龍は資産家の息子だから、その娘と言うことになれば、選択の幅も出てくる。花嫁修業のようなこともできるし、奉公とはいっても、女中というわけではなく、預かるという形で働くこともできるのかもしれない。とにかく、普通だったら働かなくてはいけない年齢だが、橋龍の子というだけで、選択肢は多くあるのだ。今日は、初江と良江は喧嘩をして、険悪な雰囲気だったが、寺子屋から帰る頃には、もう忘れてしまったかのようだった。もちろん、すべてを忘れているはずもなく、根底ではくすぶっているはずだったが、毎日一緒に暮らしていれば、いつものことで、すぐ忘れてしまうようになるのも当然だった。ただ、直也君がいる以上は、またぶり返すに決まっていて、幸江が言うように、決着をつけなければ、いつまでもそれは変わらないのだ。

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