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パパはかわら版

第5章 パパはかわら版D

幸江は、しょうがなく、ついていった。橋龍たちは、店の入り口に近いところに座っていた。まだ暖かい時期ではないが、今日は、日差しも強く、普段より暖かかった。3人は、橋龍の後ろ側に団子を頼んでから座った。そのとい面にいたのは、礼子だった。もちろん、3人は礼子とは面識がなかったので、礼子は3人を見ても何とも思わなかった。礼子は、この間橋龍と会うことを約束していた。礼子も、他の女中と同じで、昼間外に出ることが少なかったので、まだ肌寒いとはいっても、心地よい気分だった。飲み屋の女中というのは、大体独身の間だけやるのが普通だった。ただ、中には、子供を抱えているような娘もいたが、それはごく僅かだったといっていい。もちろん、子供がいるという前提で女中をやっている娘はいなかったので、そういった娘はもぐりだったといっていい。飲み屋の女中は、最初は、女郎と同じような存在だった。しかし、だんだん遊郭とは別のものとして、接待業として発展した。そのためこの頃には、体をうって客を取るというのは、下品であるとして、周りからは見下された。あくまで、接待業として客を楽しませるものであるというふうに、店の側も女中も考えていた。しかし、それでも、彼女たちはやはり、女性なのだから、いつまでもやっていられるわけではなかった。20歳前ぐらいから、30歳前ぐらいまでの10年ぐらいしかできなかった。酒を飲ませるだけでなく、自らも飲むということもあって、幕府には、あまり若い子にはやらせないようにという、決まりも作られていた。

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