テキストサイズ

パパはかわら版

第7章 パパはかわら版 F

初江「これがゾウね。いやあ、大きいじゃない」 
良江「初江さん、ゾウは大きいとか小さいとかじゃなくて、あの鼻ですよ。あの長いのが鼻なんです」
初江「ええ、あれが鼻」
良江「そうですよ」
時枝「本当に凄いわね。私が子供の頃にやっぱりゾウが来たことがあって、鼻が長いって話題になったことがあったけど、それは大げさじゃなかったみたいね」
良江「でも、ゾウは、動物の中では優しいんですよ。家族が仲良くしてるんです」
幸江「へえ、そうなんだ。そうだよね、見ているとそうみえるね。子ゾウはかわいいや」
良江「お母さんを中心に、行動しているみたいですよ」
勇作「なんかうちみたいだよ」
時枝「それは違うわよ。ようく見ると、どこの家もお母さんが中心なのよ。うちは、私がお父さんの代わりに働いているだけ」
勇作「そうかなあ」
時枝「そうなのよ」
幸江「お母さんか」
初江「あんたのお母さん今頃なにやってるんだろうね」
幸江「ほっといてよ」
初江「ゾウさんのお母さんは、本当に子供のこと考えているみたいだね」
幸江「そうね。どうしてだろうね。人間は複雑なのかな」
初江「よくいうよ。あんた、お母さんみたいになりたいっていってたじゃない」
幸江「そんなこといってないよ。私も自由に生きたいっていっただけ」
初江「どこが違うのよ」
幸江「少し違うのよ」
初江「ふ~ん。しかし、こんな愛情、私は感じたことないよ。ていっても、私はお母さんが死んじゃっていないけどね」 幸江「親切なおばさんがいたじゃない」 初江「よしてよ。私はあの人に追い出されたんだよ」
時枝「ええ、どうしたの。みんなもそろそろお母さんに会いたくなったんじゃないの」
初江「はい、そうですね。それでも、まだ当分おじさんの家でやっかいになりますから」
時枝「そう、そうなの。込み入ったことを聞いてごめんなさいね」
初江「いえ、いいんです。こんなところにまで連れてきてもらって、ほんとにすみません。幸江ちゃんは、ちょっと、お母さんが恋しくなっちゃったみたいですね、ゾウの親子を見て。ゾウも人間も変わらないんですね」
時枝「そうね。そんな感じがするわね」
初江「ようし、これで、全部見終わったよ。あとはミッキーを見るだけだね」
時枝「そうね。それじゃ行きましょうか」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ