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パパはかわら版

第7章 パパはかわら版 F

5人は、帰りも船で行くことにした。乗り合わせた船は、たまたま、来たときと同じ船員だった。一応、くるときと同じような注意を受けて、戻っていった。
勇作「俺は、腹が減ったよ。ミッキー見る前に、腹ごしらえしようよ」
時枝「そうね。そうしましょ」
初江「勇作君、動物園出てから急に元気になったんじゃない」
勇作「なんだよ。そんなことないよ。僕は、もうみたいものがみれたからね、あとは腹ごしらえだけだよ」
初江「なにいってんのよ。怖かったんでしょ。やっと終わって安心したんだ」
勇作「そんなことないよ」
良江「そうですね。ライオンに会ったときは、後ずさりしてましたからね」
勇作「君ら、本当に酷い言いがかりばかりするね。俺は男だよ」
初江「ちょっと、だらしないね」
勇作「なんだよ」といって、初江に向かって、手で水をひっかけた。
初江「ちょっと、なにすんのよ」といって、初江もやりかえした。2人が暴れて、船が揺れるので、時枝がもう止めなさいといったのだが、なかなか収まらなかった。
船員「ほんとうに、やめてください。この船は小さいですから、すぐひっくり返りますよ」
幸江「もう、止めなよ」
初江「勇作が止めないんだよ」
勇作「人のことバカにしやがって」といって、勇作は止めなかった。
初江「あんたもしつこいな」
時枝「もう止めなさい、勇作、落ちるわよ」
勇作「落っこちたってもういいよ。動物園にはもう行ったから」
初江「しょうもないな。それじゃ、勝手に一人で落ちろよ」
勇作「なに、いったな」そういって、勇作が両手で水をすくって立ち上がったとき、船が大きく揺れて、勇作が落ちそうになったのを、時枝が引っ張ったのだが、その反動で、時枝が顔からドシャーンと大きな水しぶきをあげて落ちてしまった。普通だったら大変なことになってもおかしくなかったが、それでも時枝はどうやら泳ぎができたようで、水におぼれるというようなことにはならなかった。なんともきように、顔を出して泳いでいた。それがまた、何とも色っぽい感じだった。時枝が落ちたあたりは、周りに食堂やおみやげやなんかがあって、笑い声とも心配しているとも取れるような声がかかっていた。

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