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パパはかわら版

第2章 パパはかわら版A

橋龍は、版説が終わり、打ち合わせをした後、自由な時間があるので、お茶屋にいったり、飲みに行ったりするのが、独身だった彼の日課のようになっていた。ある意味それは、彼の趣味のようなものであり、逆に他には興味らしきものがなかったともいえる。それでも、歌舞伎が好きでみにいったりはしたが、頻繁にというわけではなく、好みの演目があるときがほとんどだった。この頃の江戸は、芝居や遊郭、おき屋なども多く、それは、江戸の町衆の話題になるほど、娯楽としてこの時代には欠かせなかった。それに、俳句や短歌、書などを教えるところや、碁や将棋をするところなど、サロンのようなところも数多くあったのだ。橋龍は、飲むときは女中を相手にしていたりして、その中からいい相手になるのも何人かいたが、特別な関係を続けると言うことはほとんどなかった。もちろん、それは、彼が何年間かつきあっている女性がいたからだが、しかし、それにとらわれるというというわけでもなかったので、女中との関係は、浮気と言う程度のものだったと考えていい。相手の女性は、堺弥生といって、旗本の子女だった。弥生は、気は強いが美しい女性だったので、周りからは、大名家に嫁ぐことだってできると言われていたが、一切本人にはその気がなかった。彼には、兄がいたが、そういったことは、その兄に任せて、自分は、地位や身分にこだわるのではなく、人生を過ごすことを楽しんでいたのだ。その相手が橋龍だったのだが、橋龍は、資産家の息子ではあったが、武士だったわけでもなく、ましてや相手は旗本の娘だったので、臆することもあったのだが、弥生の美しさや、彼女の奔放さに圧倒され、何かにとらわれることなく、つきあうことができたのだ。大体、2人は、昼間会うときはお茶を飲むことが多かった。

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