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パパはかわら版

第2章 パパはかわら版A

祐子は、多少、年のいった、酒好きだった。この時代の飲み屋の女中など、世間体はそれほどいいものではなかったが、なによりも、祐子は酒好きだったということもあって、かれこれ10年も女中を続けてきていたのだ。彼女は、評判はそれほど悪くなかったのだが、飲み過ぎがたたって、店を追い出されるということは、今までに何度かあった。もちろん、ここにきたのもそのためだった。

祐子「あんた、名前なんていうの」
橋龍「橋龍」
祐子「へえ、はしりゅうねえ。おかしななまえ」
橋龍「君、酔うと人格変わるね」
祐子「ええ、人格。それでなにやってんの」
橋龍「ははは」
祐子「どうせ、こんなところで毎晩飲んでるんだから、人から金巻き上げているんでしょう。札差しあたりか」
橋龍「、、、」
祐子「どうしたのよ。何やってんのかいいなさいよ」
亭主「祐子ちゃん。あまり橋龍さんを困らせないで」
祐子「ええ、なによ。私もう首。別にかまいませんよ」
亭主「そうではありませんよ。橋龍さんがこまっているから」
橋龍「いや、いいですよ。結構面白い娘じゃないですか。楽しく飲んでますから」
亭主「そうですか。それでは、ごゆっくり」
橋龍「私はね、そこで、瓦版やっているんだよ」
祐子「瓦版。ああ、あのていへんだていへんだっていうやつね。ええ、あんなことやってて、ここでのめんの。嘘でしょ。あんたは、きっと正反対のことをやっているね。札差しじゃなけれりゃ、身売りの悪徳業者といったところか。ああ怖い。私も気をつけないと」

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