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パパはかわら版

第3章 パパはかわら版B

橋龍は、子供たちを心配する様子は全くなかった。勝手に来て、勝手に出ていっただけだという感覚だった。いくら子供だといわれても、嘘かほんとうかは分からないのだ。酒も入れば、それ以上子供たちのことを考えることもなかった。次の日になって、書斎で本を一時ほど読んでから、版屋へ出かけた。版屋ではいつものように、打ち合わせをして、瓦版をすった。しかし、今日話題にのぼったのは、瓦版にはすられていあない勘定奉行所のことだった。勘定奉行所は、幕府の財政を預かるところで、最近検閲をすることになり、瓦版の発行後の提出が義務化されていた。検閲が義務化されれば、もちろん、勘定奉行所への批判も思い切ったことはできないのだ。財政の使い方に関しては、まだかなり自由には書けたが、不正に対する批判というのは、ほとんど書けなくなっていた。財政の議論というのは、この時代、蘭学の発展などもあり、それ以前に比べれば、かなり高度な議論をしていたと言っていい。貨幣の質の問題や新田開発、産業促進、流通、雇用確保など現在とほとんど変わりのない議論は、この時代からしていたのだ。特に対立が激しかったのは、やはり儒学派と蘭学派だった。

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