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パパはかわら版

第3章 パパはかわら版B

橋龍「私が持っている情報では、幕府の財政見積もりというのは、改竄されているようです。とくに、勘定奉行が水野様になってからは、それがひどくなってますよ」
有吉「それは、分かってんだ。ただ、手を出すのは危険だ」
橋龍「しかし、改竄された見積もりを瓦版で出すというのは、私は、気が引けます」
有吉「それはそうだが、証拠だってないだろう」
橋龍「証拠だったら、私は、心当たりがあります。もし必要なら当たってみますよ」
有吉「そいつはぁ、だめだよ。そんなことに、他人を巻き込むわかにはいかない。特に、奉行所連中など巻き込んじゃいけねえ。なあ、お前が、酒井大老に不満があるのは分かるが、仮に証拠を出したところで、握りつぶされるか、誰か責任をとらされるのが、関の山だ」
橋龍「それだったら、いいじゃないですか。責任だったら私が取りますよ」
有吉「そう、急ぐな。とにかく、やらなくちゃいけないときは、やるよ」
橋龍「それは、ほんとうなんですね」
有吉「ああ、だからなあ、龍、お前もそれまでは、ことを構えるようなことだけはやめてくれ。時間をかけて、財政のあり方を問いただせば、最後には、老中や御三家も動くだろうよ。とりあえずは、それが現実的だ。勘定奉行や大老を批判するのが難しくても、できることはある。今までのだって、そうだった。不正がはびこれば、改革の機運が高くなると言うのは、江戸の世の習わしのようなものだ。そういったことに、老中や御三家が敏感だというのがあるから、太平の世も続いているのよ」

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