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パパはかわら版

第3章 パパはかわら版B

京子「どうしてですか。私は、子供の頃からこの店の女中に憧れていたんです」
橋龍「へえ、それじゃ、この辺で育ったのかい」
京子「そうですよ。私の家はちょっと離れていますが、このあたりを通ると、きれいな女中さんを多く見ました。悪く言う人もいますけど、そんなの気にしません」
橋龍「へえ、そうかい。そうだね。このあたりは、100軒以上の店が並んでるからねえ。憧れたか」
京子「はい」
橋龍「しかし、それでもきれいだって言うだけではこの仕事は大変だろう。客の相手が好きじゃなければ、続かないんじゃないか」
京子「別に、嫌いじゃありませんよ。お酒はそれほど好きじゃありませんが、なんとか飲めるようになりました」
橋龍「そうかい。それじゃ飲みなさいよ」
京子「いただきます」
橋龍「憧れた仕事に就けるとは言い時代になったねえ。飲み屋の女中なんていうのは、一昔前までは、誰にも嫌われた。札差しや両替商相手に、体を売るのがしごとだったから、女郎と同じだった。それが、接待だけで飲ますようになったのは、この店が初めてだった。私は、若い頃からこの店で飲ませてもらっているが、先代の亭主は、喜んでるだろうねえ。もしかしたら、女中をあなたみたいにしたかったのかもしれない。それがかなったのかもしれねえね」

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