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パパはかわら版

第3章 パパはかわら版B

橋龍「、、、だいたいなんで、自分の子供を追い出したんだ」
陽子「あのこったら、ほら、凄く口が悪いでしょ。誰に似たのか。時々、あなたのこと思い出すのよ、あの子を見ていると。だからちょっと意地悪したこともあったのよ。それで、あなたの父親は、橋龍だっていったら、出ていったの」
橋龍「、、私は分からないね。母親っていうのはそういうものなのかい」
陽子「あわないのよ。あの子と私」
橋龍「お前はいったいなんてこといっているんだ。それが、母親がいうことか」
陽子「ごめんね。もう邪魔になっちゃったの」
橋龍「もういい」
陽子「でも、全部あなたが悪いのよ。私は、あなたとの付き合いは真剣だったのよ。それを無下にしたんだから」
橋龍「私は、帰る」

橋龍は、酔いもすっかりさめてしまった。陽子は母親としてどうなのかといえば、やはり、正しいとはいえないだろう。しかし、すべては、自分がまいた種であったのは間違いなかった。陽子は、当時、人気があった女中だった。橋龍は、彼女とは確かに、結婚をしてもおかしくないような付き合いはしていた。ただ、橋龍は、飲み屋の女中と結婚しようとは考えてはいなかったかもしれない。そもそも、瓦版が女に見境がないというのは、この時代にはあまりないことで、身持ちの堅い職業だったといっていい。そういったなかでは、彼は例外的なところがあったのだ。それでも、結婚となると、どこかに、社会的なバランスを自分で取ってしまうというのは、ある意味自然であったと言えなくもない。そういったことを考えれば、初江が自分の子供の可能性が高くなった現実を前にして、陽子を一方的に責めるというのもおかしいというのは、冷静になるに従って、橋龍も考えることだった。

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