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パパはかわら版

第4章 パパはかわら版C

諭吉「まあだいたいこんなもんか」諭吉は、瓦版のまとめ役のようなことをしていた。大体、会議を取り仕切るのが彼で、その上司に有吉がいるのだが、有吉は、責任者のような存在で、大方を見るのが仕事だった。もちろん、何かをするときには、有吉の許可が必要だったが、編集会議には必ず常にいるというわけでもなかった。それに有吉の仕事の一つに、知識人との交流というのがあったと言っていいと思う。有吉は、日本橋一の瓦版の責任者だったこともあって、知識人からの信頼も厚かった。その知識人たちとの交流が、ある部分、平凡屋の方向性を決めているところもあったのだ。何日かに一度は、有吉自身も寄稿したが、その多くは、そういった知識人たちとの交流から生まれていたのだ。橋龍も、版説の名声もあって、そういった知識人と対談することもあった。それは、10日に一度ぐらい、瓦版に載せられることになっていた。大体この頃は、蘭学が力を持ったこともあって、多くの分野に蘭学が幅を利かせたが、それでも、経済や政治の話となると、従来の儒学者たちが依然力を持っていたのだ。儒学者は、それぞれの学派の立場というのがあったが、こと経済の話になると、そういった枠は消えつつあったと言っていい。

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