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パパはかわら版

第4章 パパはかわら版C

経済理論に関しては、学派にとらわれることない議論というのは、この時代あたりからは、普通に行われるようになっていた。しかし、そういった学者同士のやりとりよりも、平凡屋では、いつも話題に上るのが、勘定奉行所の不正だった。これは、酒井大老が、大老職についてからというもの、年を増すごとに酷くなってきていた。それも、その不正が世間で取りざたされるようになると、瓦版の検閲をするという、何とも、厳しい政策を打ち出してきたのだ。酒井大老は、前将軍から信頼された人物だったが、現将軍が病弱なこともあり、思いがままに権勢を振るっていたのだ。人事権の乱用も、酷かった。老中や御三家の中には、それを快く思わない勢力というのはいたのだが、老中職も人事権の乱用で、思うがままにするという酷さだった。御三家は、なんとか、そのなかに、清水家の出である、松平義忠を老中職につけさせてはいた。御三家からしたら、幕府を家臣に牛耳られている状態というのは、思わしくなかったのだ。御三家を前にしても大手を振るう酒井という男は、狡猾さで生き抜くタイプの人間かもしれないが、それでも、利益の折半がうまかったからか、周りには多くの人間が集まった。それが、経済をよくしたりもしたが、財政を悪化させる原因にもなっていた。自分の私腹を肥やすのには、賄賂を直接手にして、その配分には、勘定奉行所に都合をつけさせるという仕組みになっていたのだ。酒井大老自信は、酒井家のなかでも、傍流というわけではなく、宗家に近い位置にはあった。しかし、宗家ではなかった。政治力で、石高を増やし、宗家をしのぐまでになったが、逆にそれがゆえに金もかかるようになったのが、こういった状況を生み出していたのだった。

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