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パパはかわら版

第4章 パパはかわら版C

左吉「勘定方の情報というのは、どうなんでしょうね。最近は経済も思わしくありませんが、そのためか、かなり酷いものばかりですね」
諭吉「しかし、それはうちでは手が出せないものだ」
橋龍「それにしても、こういったときに、瓦版がなにもできないというのは、果たして、職を全うしているといえるのかどうか」
諭吉「そんなこというなよ。君は、かなりいい仕事をしているよ。女にはだらしないが、君の仕事を、無駄だと思う人間はいない」
左吉「そうですね。人間ですから、欠点もありますが、橋龍さんは、それを上回る仕事をしてますよ」
橋龍「なんだい。ほめてんのか」
左吉「そうですよ。私らの仕事というのは、やはり権力とのやりとりになってしまいますが、それを萎縮させないでやっていられるのも、橋龍さんがひるまない姿勢を見せているからですよ」
橋龍「お前にほめられてもな」
左吉「今度おごってくれるだけでいいですよ。気分よく仕事をしてもらえるんだったら、なんでもいいますよ」
橋龍「ふん、そういうことか」
諭吉「不正というのは、続かないというのが鉄則なんだがな、酒井大老というのは、うまい具合にやるね」
橋龍「そんなこといわないでくれよ。不正を認めているように聞こえる。私らがそんなこといったら、庶民はどうするんだ。こういったことの付けは、必ずそこに行くようになっている。私らには、そういったことに対する責任は多少はある。この版屋だって、そういった姿勢を持っていたからこそ、江戸での信頼を得てきたんだ。その姿勢をなくすことはできない」

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