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パパはかわら版

第4章 パパはかわら版C

2人の関係を、一弘がどう思っていたかは知らないが、いくら友人とはいえ、商家の出の橋龍に紹介したのは、まずかったと思っていたかもしれない。弥生は、旗本の娘として、それなりの家に嫁ぐべき女性だったのだ。それを、自分が縁で、全く想像もしてなかった方へ、弥生がいってしまったのだ。というよりいかせてしまったように一弘は思っていただろう。そのためかどうかしらないが、橋龍と一弘が会うときは、あまり弥生の話はしなかった。橋龍も、しづらかったはずだ。それでも、何年かが過ぎれば、弥生の生き方は、堺家では認められていたというわけではなかったが、尊重されるようになっていた。家では、見放したと母親はいっていたが、言葉とは別に、昔よりも、母子の関係はよくなっていたようだった。そういった事情もあってか、弥生は、書を教えることをしていた。近所の子供にも教えたが、大人にも教えるぐらいの腕前はあった。この時代は、書というのは、たしなみとしては重要なものとされていたので、周りの見る目は、好き勝手にやっているとはいっても、悪い印象があったというわけではなかった。弥生は、最近は、橋龍に子供たちにあわせてもらう約束をしていたが、一向にその機会が訪れないので、自分から子供たちに会いにいくことにしたのだ。彼女も、日本橋の自宅から、子供たちに書を教えてからきたので、もう時は、夕方になりかけていた。

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