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ショタコイ

第4章 手を伸ばせば、光に届きそうな心地だけ残った。

桐原 タクト。


それが、由の実名だった。


彩に出会うまで、由の日々は昨日も今日も明日も、全てが同じで、1日の境界線も、未来の水平線も分からない毎日だった。


由の父は、由が小学校に入る前に事故死した。


社員旅行の帰り、バスの運転手の居眠り運転が原因で、対抗斜線の大型トラックと正面衝突した事故。


死傷者27名を出したその事故の、死者の一人が由の父であった。


コツコツ貯めていた少しの貯金と、バス会社から支払われたわずかな賠償金の半分を使って、今住んでいるこの町に引っ越し、由の母は水商売を始めた。


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