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天海有紀編

第1章 1

「誰の」
「上司のです」
「へえ」
「それで、電話番だけやっていたんです」
「なんだい、切られたのかい」
「まあ、そうかもしれません。でも、悪いのわたしなんです。何人かの上司と付き合ってたんだから」
「それで、みんな怒っちゃったのか」
「そうでもないですよ。みんな体裁が悪くて、私に関わろうとなんかしなくなっただけです」
「ふうん」
「でも、私も電話番だけっていうわけにもいかないなと思って」
「へえ、そうかい。でも、それはしょうがないな。自分が悪いんだから」
「分かってます。それに、ここで迷惑をかけてることも」
「まだ入ってきたばかりだろ。やる気が出たら、一生懸命やりなよ。面白くなるかもしれないから」
「そんなことありませんよ。もう、とにかく、向いていないっていうのは、一度やって分かってるんです」
「一度駄目なら、もう一度だよ」
「水商売でもやろうかな」
「ははは、短絡的だな」
「ソープランドあたりがちょうどいいかも。すすきのあたりで」
「なんだい、あっちの方が実家か」
「全然。だって、東京でやってて、知り合いの人なんか来たら大変だもん」
「そういった話は、私の管轄外だね」
「お客できてくれますか」
「ははは。どうかな。そんな冗談いってないで。大丈夫だよ。仕事も慣れるよ」

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