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天海有紀編

第1章 1

だいたい、裕太がやっていることに、なんの期待もしてないのだ。あそこも、家賃を取るとはいってあるが、有紀は、最初からただで貸しているようなものだと思っていた。家賃を差し引いて、黒字が出たら、そこからもらえればいいと思っていただけだった。それだったら、いくらなんでも、多少は出るでしょとは思っていたが、仮に出なくても、それが有紀の負担になるほどのことでもない。となるといったいなんだろうと考えを巡らした。、、、もしかしたら、更年期。これが、あの知らない間に大変になることもあるという。そう思ったとたん、有紀は愕然とした。私まだ、子供も生んでないのよ。それに、まだ41。本当に、この年でと考えはじめると、有紀には、すべての原因が、更年期であるとしか思えなくなってきてしまった。とにかく、そういうたちなのだ。一度気になると、いつまでも気にする。それも、とことんまで悩んでしまうタイプだった。有紀は、突然立ち上がった。さっきから、チリ子は、有紀が私のことを首にしようと思っているんだと思っていた。それを悩んでいるようにチリ子には見えていた。それなので、有紀が立ち上がったのは、決断でもしたかのように見えてしまった。有紀は、ちらっと、チリ子の方を見た。チリ子は目が合ってしまった。ああ、何いわれるんだろうと思ったとき、有紀は、何も言わずに、またオフィスを出ていってしまった。チリ子は、切り出しきれなかったのかもしれないと思った。

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