鳴宮くんは悪い子‼
第11章 乙女心?いや、ガサツ心
体育館裏には、教師専用の駐車場が設けられ、何台か車がある。もちろん、崎先生の車もそこに。
「じゃぁね、えみ」
「う、うん……」
不安の表情を見せる私に、美樹は大人っぽく後ろ髪をなびかせ、体育館裏に向かった。
「はぁ」
1人、短いため息を漏らすと
「なんだぁ?あれ、お前の友達?」
聞き覚えのある声。
びっくりして振り返ると、校内にもかかわらず煙草をふかす鳴宮が!!!
「ちょ、校内禁煙!!!その前に、未成年!!!」
煙草を彼の口から抜くと、中庭に通じる渡り廊下の草むらに投げ込み踏む。
「いくらヤンキーだからってねぇ、犯罪でしょうがっ!!!」
「え、まぢ?」
うぉい!!!
知らんかったんかいっΣ( ̄□ ̄)!
「それより、お前の友達が手振ってんぞ」
「え?」
体育館裏から助手席だけ覗かせる車が、前進する。
美樹が私に手を振っている。
隣には、優しく笑う崎先生が。
「へぇ。美人だけど、教師と援交か」
「え、援交なわけないでしょ!!!…ってあぁ!!!」
バレてしまった(*゚ロ゚)
……しまった。
美樹も崎先生もハッとなり、鳴宮の姿に硬直したのが、ガラスを隔ててもわかった。
「あ、な、なる……」
「はいはい。どーせお約束の『黙ってて!!』だろ?」
なんだ。本人は他の人に言う意思はないようね。
「お約束!!お願いします!!」
「おいおい。まだお約束あるだろ」
へ?
鳴宮の顔を見ると、完全に色気ムンムンで、だらしない制服の紺色のネクタイを更に緩める。
その行動と、『お約束』という言葉に、私は彼が何を期待しているか気付いてしまった。
「ま、まさか……」
「そのまさかだよ。おまえが付き合う付き合わねぇかは関係ない。ほら、言えよ」
「や、やだ……」
じりじりと迫る鳴宮。
「じゃ、さっきの写メ撮ってっから、学校のホームページにでも……」
「やめて!!!」
そんなことしたら……
美樹が…
くすりと笑う鳴宮は、そっと私の頭に手をおいた。
「早く。えみ」
「ぁ………」
その鳴宮の声は、私がファーストキスを拒めなかった時と同じ、甘くとろけるような誘う声だった。