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一日一恋

第1章 はじめて

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人を好きになる資格がないとは思わないけれど
人から好いてもらう資格はないと思う
好きという気持ちはヒトが持つ
もっとも神聖でその人の核を成すいわば精密機器のようなものだ
輝かしくそれぞれに光り輝く世界にたったひとつしかない宝石のようなもの
彼らはそれを自分が心から愛おしいと思った相手にその宝石を送る
恋とか愛とか
幻想のようなときめきに浮足立つ彼らは
その危険にまるで気づいていない
たとえばその愛を交わしあう者同士が
同じく幻想に心囚われていればいいのだ
異なる者同士が互いにその夢心地に囚われているなら
その二人は天国にだって行けるのだから
だけど私には
その天国は届かない
まるでその人が天国にいるときは
私は区別のつきもしない紙一重の現実にいる気分になってしまうから
だから私だけに贈られたったひとつの愛が重くなり
捨ててしまう
天国を一時にして奪われたものに待つのは地獄だ
それが怖い
私にはその愛が燃え尽きるまで
その宝石を身を粉にして守りきる自信がないから
だからたとえ恨まれても
その宝石を手放す準備をしていよう
たとえ天国がそこに見え
どれだけ羨ましいものに見えたとしても
私だけは手に残った小さな石の欠片を
その天国にそっとおいて
貴方の愛に背を向けよう

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