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林道

第1章 其の一

―カノンはこの世にはもういない。

―永遠にこの林をさまようのだ。


闇がタカヤに囁く。

いや、これはタカヤの心か。

心って何だ?

(俺は何を考えているんだ。カノンはすぐ隣に座っているじゃないか。)


(ほら、寝息が聞こえる。体の温かさも感じられる。)


(カノンは今、ここに生きているじゃないか。)



―くす、くす、くす。



闇から嘲笑がする。



―本当に?生きているの?


タカヤはカノンの方を見る。


「カノン、なぁ、カノン」

薄ら寒くなって、タカヤはカノンに呼び掛けていた。

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