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ヒーロー

第6章 確信

あれから。



ぶうぶう文句を言う城川さんをなだめて、美術室の掃除をすることになった。


雑巾を持ってきて埃まみれの机や椅子を拭いたり、天井の蜘蛛の巣を払ったり。


バラバラになったキャンバスや絵の具を整理したり。


何かを動かすたびにもうもうと埃が舞い上がるので、寒いけど窓を全て開けなくてはならなくなった。



ひゅう、と冷たい風が汗ばんだ首筋に刺さる。

―寒い。

こんなに動いたのは初めてかもしれない。

こんなに人と長い間喋ったのも初めてかもしれない。

普段学校にいる間は全然喋らない時もあるので、もう喉が痛い。


ずいぶん久しぶりに笑えた気がした。


もしかしたら僕は、ずっと憧れていたセカイに少し近付けたのかもしれない。


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