
Memory of Night2
第2章 春
それだけではなく、どんなことでもほぼ完璧にこなしてしまう器用さも持ち合わせていた。
苦手なことなどないのかと思っていた晃が実は朝に弱いなんて、宵からすればものすごく意外だ。
「……キスで起こしてくれれば一発なのに」
晃が切れ長の瞳をやわらげ、そんな提案をした。
「ぜってーやだ」
宵はふいっとそっぽを向いてそれを拒否する。
前に一度だけ、晃のお望み通りにキスで起こしたことがあった。
一応目は開いたものの、寝ぼけた晃に危うくベッドに引きずり込まれそうになったのだ。
ばりばり寝起きのはずなのに晃の力は思いの他強く、朝っぱらからもう一ラウンド始まってしまうのではないかとその時の宵には冷や汗もんだった。
晃もその時のことを覚えているのか苦笑している。
またからかわれる前にと、宵はさっさと話題を変えた。
「それより晃。俺、今日学校遅れるから」
「バイト? 珍しいね、平日の午前中に予定を組むなんて」
「俺が決めたんじゃねーもん。学校ある時間は無理だっつったのに、あの女が勝手に」
「ああ。それであんなに機嫌が悪かったのか」
