
Memory of Night2
第2章 春
ヒールを履いているためか宵よりも背が高い。
「初めまして。同じく白鳥芸能プロダクションの者です。如月春加(きさらぎはるか)と申します」
名乗ると同時に右手をすっと持ち上げ、サングラスをはずした。
(けばっ……)
女性に対しての第一印象としては最悪な気がするけれど、宵は思わず心の内でそう呟いてしまった。
目の周りに濃く塗られたアイシャドーやアイライン。
睫毛にはびっちりとマスカラがつけられていて、とにかく目周辺が黒い。
全て化粧のせいだと思うけれど、全体的に濃い顔立ちの中で瞳の色だけは薄い茶色だ。
きっとこの色が彼女の素の色だ。なんとなく、宵はそんなふうに思った。
気付けば右手を差し出されていて、宵が戸惑ったような表情を向ける。
春加と名乗った女は軽く首をかたむけ、鮮やかな笑みを浮かべてみせた。
「どうぞ、よろしく」
女性にしては低く、ハスキーな感じだ。
また先ほどの変な勧誘の続きだろうか。
宵は警戒しながらも差し伸べられた手をむげにもできず、とりあえず口での挨拶はせずに手だけを差し出した。
