
Memory of Night2
第2章 春
白い肌と共に、爪の色が目についた。それは、唇に塗った紅の色と同じく、毒々しいまでの赤。
奇抜な格好の女は握手をしおえると再び同じ質問をしてきた。
「モデルのバイト、してみる気ない?」
「……結構です」
「どうして?」
「どうしてって……」
宵はわずかに瞳を細め、苛立った様子で春加を見据えた。
どうしてと言われても困る。学校だってあるし、そもそもモデルなんて考えたこともない世界だ。こんな怪しい勧誘に乗る人もいない気がする。
「だから、興味ないんで」
「もったいないわね。あなたなら売れそうなのに」
春加は右腕を腰にあて、口元の笑みもそのままに宵を見つめている。身長が高いため微妙に見下ろされる格好だった。
「雑誌に載れる機会なんてめったにないでしょう? 人気者になれちゃうわよ。一度だけでもいいわ、事務所に遊びにきてみない?」
その声に便乗するように、スーツの男も近づいてくる。
「そうだよ。遊びにくるだけでいいからさぁ。社会勉強だと思っていろいろ見学していって? おいしいお茶ご用意しますヨ?」
