
Memory of Night2
第2章 春
「――で、携帯を取りにプロダクションまで行ったのはいいとして、結局そのバイト引き受けたんだね。なんで?」
晃の声で我に返る。
一ヶ月前の出来事を頭の中で回想していた宵は、やや間を空けてようやく晃の言葉を理解した。
「いや、特に理由はねーけど……」
言葉を濁し、わずかに晃から視線をそらす。
「その反応も怪しいな。宵のことだから、どうせ金に釣られたんだろ?」
違う? とたたみかけられて、宵は一瞬言葉に詰まった。
「……そーだよ」
それからしぶしぶ頷いた。
志穂が入院していた頃は、生活費や手術費用を稼ぐために宵は体を売っていた。
あの頃はいろいろ必死だったしもともと性的な行為に嫌悪や抵抗があまりなかったため、それほど苦痛に感じたことはなかったが、金にがめつくなってしまった自覚はある。
いい加減貧乏性なのかもしれない。
その後晃の力も借りてどうにか志穂に手術をさせ、無事に退院させることはできたが、一度染み付いてしまった金銭的なことへの価値観はなかなか拭い去れないようだ。
仕方のないことだと割り切ってはいるけれど、そこを指摘されるとなんとなく嫌だった。
