
Memory of Night2
第3章 名前
ましてやテストだし、これに出席しないと補習で校庭を走らされるのも本人は承知しているだろうから、サボるとも思えないのだ。
撮影が長引いているのだろうか。
そう思った時だった。
「あ……」
目の前のコートで使っていたバスケットボールが、枠線から転がり、得点板の下をくぐり抜けて体育館の外へと出てしまった。
晃はコート内の生徒に軽く手で合図して、ボールを追う。
だが晃が体育館を出ようとした刹那、そのボールがふわりと持ち上がった。
視線を上げれば、ずっと待っていた人物がボールを抱えて立っている。
晃はほっとして、声をかけた。
「宵。ずいぶん遅かったね。撮影、大変だったの?」
「……いや、つーかその後が」
「後?」
宵は胸の前で軽くボールを放り、晃にパスする。
そのまま体育館内へと入ってしまった。
(今日は朝より不機嫌そうだな)
いつだって、撮影の前は機嫌が悪いが終わった後まで不機嫌なのは珍しい。
晃はボールをコートに返し、自分も得点板に戻った。
宵は来たけれど、時間的には微妙な気がする。
