
Memory of Night2
第3章 名前
さらに言えば午前中の授業を休むハメになったのだって、事務所の人間が平日に撮影の予定を入れるから。
宵はそのせいで収まらないイラつきを必死で抑え、続ける。
「いいじゃん先生。テスト、少し厳しめでもいいから。まだ時間もあるだろ?」
柳沢はつかの間考えるような素振りを見せ、やがて頷いた。
「まあ、遅刻の理由も体調不良だしな。今からテストしてやるから、さっさと体を馴らせ。その代わり、テストが合格点に届かなかっら、校庭十周走ってもらうぞ」
「……げっ。距離長すぎっ」
「文句を垂れるな。もとから補習は校庭十周だったはずだ」
「……はーい」
間延びした返事を返し、心の内でそっと舌打ちをかます。
けれども、何はともあれテストを切り抜けさえすれば、面倒な補習は免れるのだ。
それはとてもありがたい。
今日のテストは確かドリブルとシュートだったはず。多少採点基準が厳しくなっても、それなら多分どうなかなるだろうという自信があった。
宵は屈伸と伸脚、手首と足首を軽くほぐして体育館の端に転がるボールを手に取った。
二、三床につき、ボールの感触を確かめる。
