
Memory of Night2
第3章 名前
ならいっそテスト自体を免除してもらいたい。
それが本音だったが、柳沢が聞き入れてくれるはずはないので口には出さない。
「嫌なら構わん。放課後補習な」
「……わかったよ、やるよ! やればいいんだろ!」
「ほら、言葉遣い」
「やーりーまーすー」
もうほとんどヤケクソになりながら、宵が応える。
柳沢はそれを受け、晃に視線をやった。
「こいつの相手してやってくれるか?」
「はい、わかりました」
(わかりましたじゃねーよ)
いっそ拒否してくれればいいのに、と思う。
晃は多分、柳沢の言葉を聞いていたのだろう。
微妙に口元が綻んでいる気がする。何か妙なことを企んでいる時の顔だ。
そこでふいに柳沢が何歩か動き、コートで試合をしている男子達に呼びかけた。
「よーしみんな聞いてくれ! これから大河と大西で試合をやってもらう。このコート、空けてもらっていいか?」
唐突な提案に、生徒達がざわめく。
「何? おまえら試合すんの?」
「あー……成り行きで」
「おもしろそうじゃん」
「ならいっそ代わってくんねえ?」
