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Memory of Night2

第3章 名前


 試合を中断し、宵の姿を見つけて声をかけてきたクラスメイトと軽口を叩き合う宵。

 柳沢は二人をコートの真ん中に向かい合わせで立たせ、ボールを一つ宵に渡した。

 男子は壁際に散らばり、バドミントンで打ち合っていた女子達も、これから何が始まるのかと網の側に集まってくる。

 ざわつく館内で、柳沢は腕時計を確認し、言った。


「制限時間は七分。時間内に多く得点を入れた方が勝ちだ。相手のカゴに入れた場合は無効。あとは通常のバスケのルールで適当にやれ。準備はいいか?」


 柳沢の言葉を受け、晃は宵に右手を差し出す。


「お手柔らかに」

「……それ、こっちのセリフだっつの」


 晃にとって勝敗は関係なく、補習の有無がかかっているのは宵の方なのだ。

 そう毒づきつつも、宵は右手で晃の手を掴んだ。

 軽く握って握手を終え、膝を曲げて構える。

 瞬間――ホイッスルが鳴り響いた。試合開始の合図だ。

 先手を取ったのはボールを持っていた宵の方。左手でガードし、ドリブルをしながらゴールへ向かい走る。

 けれども晃にそのボールを奪われると、立ち止まってあっさり追うのをやめてしまった。

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