
Memory of Night2
第3章 名前
晃はそのままボールをついて、自分のゴールへと突き進んでいく。あっさりゴールを決めてしまった。
そのプレイには無駄がなく、しなやかに伸びる肢体が綺麗だ。
周りから、黄色い歓声があがる。
鳴り響く笛の音と共に、柳沢の怒声が飛んだ。
「こらっ! 大河! もっとちゃんとボールを追え! 真面目にやらんと二十周にするぞ!」
柳沢の言葉に、自分も周りと同じように晃に見入ってしまっていた宵は、はっと我に返る。
「なんで増えてんだよ!」
「気合いが足りないからだ! 死ぬ気で走れー!」
なぜ体育のテストで死ぬ気にななければいけないのか、二百字以内で説明していただきたい。
妙に熱い体育教師に呼応し、他の生徒達の歓声も威力を増す。
「なんか盛り上がってるね」
ほいっとボールをパスしながら、晃が笑う。
「こんな熱烈な応援されちゃ、本気にならないわけにはいかないんじゃない?」
「……わかったよ、やればいいんだろ?」
宵は晃を睨むように見据え、投げやり気味に言う。
センターラインに立ち、宵はもう一度ボールをついて走り出した。
