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Memory of Night2

第3章 名前


「――残念だったなー。宵に二十周走らせたかったのに」


 放課後。心の底から残念そうな顔で、晃がそんなことを言う。

 隣を歩いていた宵は、呆れ顔で晃を振り向いた。


「人が苦労してんの見て楽しむ気だろ? 変態」

「これも愛だよ」

「どこが」


 そんなねじ曲がった愛ならむしろいらない気がする。

 陽も沈みかけた夕刻、二人は表通りを歩いていた。夕方ということもあり、学生や主婦らしい人がちらほらと見える程度で混雑はしていない。

 そんな中を宵のアパートに向かって歩いていた。

 晃は今日も、宵の家に泊まるという。

 こうして二人で足並みを揃え、同じ家に帰ることにもそろそろ違和感がなくなってきている気がして、宵は少し複雑な気分だった。


「にしても、すごい差し入れの量だな」

「どーするか、これ」


 二人はそれぞれ、ビニール袋を二つずつ抱えていた。

 中身はスポーツドリンクやら制汗スプレーやらタオルやら。体育の後に女子達から貰った差し入れだった。

 貰ったと言うより、無理矢理押し付けられたと表現した方が正しい。

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