
Memory of Night2
第3章 名前
雪崩れのような押し寄せっぷりに拒否する間もなくこれらの品々を置いていかれた。
「さすがに返しきれねーしな」
「ありがたく頂戴しとこうか」
スポーツドリンクは日持ちするし、スプレーやタオルは実用的だ。さすがにタオルは返しに行くべきだとも思ったが、名前が書いてあるわけでもなく持ち主がわからない。
返しに行けない。
「宵の家に保管で」
「がさばりそー」
ただでさえ狭いのに、と宵は文句をたれる。
それから思い出したように、晃を振り向いた。
「それより腹減って死にそうなんだけど。俺、昼食ってねーんだよ」
「ああ、昼は忙しかったもんな。コンビニ寄る?」
この通りをもう少し行けば最寄りのコンビニがある。今日の朝食べた菓子パンも、そこで買ったものだ。
「そうだな、そこで……」
宵が頷きかけた時だった。
「神谷(かみや)先輩……っ!」
ふいに後方から女性の声がした。
誰かを呼び止めているような、焦りの滲んだ声。
「神谷先ぱーい……!!」
再び同じ名前。
晃には聞き覚えのない名だったが、その呼び名にはっと立ち止まり振り向いたのは宵だった。
