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Memory of Night2

第3章 名前


 宵の視線を追って晃も振り向けば、少し離れたところから制服姿の女の子がかけてくるのが見えた。

 その子は宵の前で立ち止まり、嬉しそうににっこりと笑った。


「神谷先輩、お久しぶりです! 私のこと覚えてますか?」


 年の頃はおそらく同じくらい。よく見れば、南風高校の隣の女子校の制服だった。

 茶っ気のある髪はくるくると天パで、毛先があちこちに跳ねている。そばかすが少し目立つが色の白い肌をしていた。

 それほど器量がいいわけではないが、笑った顔はどこか憎めない愛嬌のある顔。


「誰……?」


 宵はきょとんとその子を見つめた。


「酷いっ! 私ですよわ・た・し! この天パ、見覚えありませんっ?」

「……天パ?」

「ほら、小さい頃近所だった、桃井(ももい)……」


 そこで宵はあっ、と声をあげる。


「桃井……はすみ!?」

「大正解でっす!」


 はすみと呼ばれた少女は、右手の親指をぐっと立ててグッドの合図。

 宵はしばらく驚いたような顔で、はすみを上から下まで見つめ、ようやく声をかける。


「すげー、何年ぶり? あれ、東北の方に引っ越したんじゃなかったっけ?」

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