
Memory of Night2
第3章 名前
「はい、でも今年からこっちに戻ってきてるんです。父の転勤で」
「へー。なんか……見た目全然変わってないな?」
宵の言葉にはすみはむっと眉を吊り上げる。
「二重に失礼です。年頃の女の子に向かって変わってないとは。っていうか変わってないのになぜ思い出してくれなかったんですか! だいたい、先輩は昔からそういうところが……」
「……よくしゃべるとこも変わってねー」
「失礼ですってば!」
はすみは唇を尖らせて抗議する。
だがすぐに何かを思い出したらしく、スカートから携帯を取り出し時間を確認した。
「私、これから塾なのでまた! ……あ、てかすみませんお二人で帰ってたのに呼び止めてしまって!」
ぐるんと晃を振り向き、ぺこぺこと頭を下げた。
高いテンションと口の動きに圧倒されながらも、晃は得意の優男風の笑みを浮かべて返した。
「いいえ。大丈夫だよ」
「どうもですっ」
一際大きく頭を下げて、再び宵へと向き直るはすみ。
「じゃあ、この辺で失礼します。叔母さんにもよろしく伝えてくださいね。バイバイ先輩っ」
