
Memory of Night2
第4章 同居
「お愛想のカケラもねーんだから」
嫌みを込めてつぶやいても、春加はまったく取り合わない。
視線を正面に向けてしまった。
赤いキャミソールに黒い七分袖のジャケット。下はショートパンツ。
車を運転しなければいけないにもかかわらず、春加の露出した足はヒールの高いサンダルを履いていた。
彼女の服装は、昼間だというのによく目立った。
その上乗り回す車は赤いスポーツカーだ。
車内には女性らしい装飾品はほとんどない。ハンドルカバーとシートがヒョウ柄なこと、CDプレーヤーから流れる曲の音量がやたら大きいこと以外は、普通といえば普通なのだけれど。
宵は後部座席からショルダーバッグを取って、車を下りた。
ちょうど昼時。日差しの柔らかい時間帯だ。
春加に軽い会釈をし、ドアを閉めた時だった。
ふいに晃の家の庭から声が聞こえた。
「今日は早かったじゃん」
振り返ると、黒い門から晃が出てくるのが見えた。
「……わざわざ出迎えかよ? 引く」
「いやいやいや。庭の花に水をやってただけなんだけど」
晃は苦笑して、捲りあげていた長袖シャツを下ろした。
