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Memory of Night2

第4章 同居


 それから宵の後方へと目を向ける。道の傍らに停車させた春加の赤いスポーツカーを一瞥した。

 それとちょうど重なるタイミングでエンジン音が一際大きく響き渡り、車が発進する。

 動き始める車の中、春加は運転席からちらりとこちらを覗き見た。晃と目を合わせわずかに頭を下げる。

 けれども珍しいことに、晃はその会釈に応えなかった。いつもならば女とあれば年齢や容姿にかかわらず、甘いマスクを被って応対するはずなのに。

 今日はただ黙って走り去っていく春加の車を見送るのみ。

 宵は不審に思い、声をかけた。


「ケバくね? あの女の化粧」

「……女性に対してその発言はどうかと」


 やんわりとは注意するものの、宵の言葉を否定はしない。晃も心の中では同意しているのだろうか。


「あの女性が宵をスカウトした人? 苦手……なんだっけ?」

「あー……まあ。スカウトされたのは違う人。いや、あの女も一緒にはいたけど」

「名前は?」

「……名前?」


 宵は一瞬訝しげな顔をした。晃がそこまで深く突っ込んでくるなんて、珍しい。

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