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Memory of Night2

第4章 同居


 晃はさらに首を捻ったが、結局思い出せなかったようだ。

 軽くため息をついて話題を中断させた。


「とりあえず中入ろう。昼、まだだろ? 一緒に食べよう」

「うん」


 晃は門の左横に立ち、先にどうぞと宵を中に招き入れた。

 まるで女性をエスコートするかのような動作だが、これは多分意識してのものではなく無意識なんだろうな、と思う。習慣のようなものなのだろう。

 晃に促され庭に入ると、違和感に気付いた。庭の隅の車庫入れに、二台車が停まっているのだ。

 たまに見かける乗用車の他に、黒いワゴン車が一台。


「おい、もしかして……」


 ふいに思い当たり、宵は足を止める。


「うん、珍しく父親がいるんだ」


 立ち止まった宵の腕を引き、晃は再び歩き始めながら言う。


「日曜の昼に両親が揃ってるなんて、珍しくてさ。どういう風の吹き回しかと」

 晃は笑った。

 晃の父親は協立総合病院の院長をしている。母はそこの看護師だ。

 そのため、晃の両親は多忙を極めていた。特に父親は病院に泊まりこむことの方が多く、なかなか家に寄り付かない。

 晃が幼い頃から、両親が家に揃うことなどめったになかった。

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