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Memory of Night2

第4章 同居


 そのことを、以前宵も聞いていた。


「俺、帰る」


 宵は再び立ち止まった。


「え?」


 晃も立ち止まり、振り返る。


「せっかく親が二人とも揃ってるのに、俺がいたら邪魔じゃね? 今日は日曜だし、先に家戻ってるからゆっくり団欒してこいよ。どうせ今日で――」

「大丈夫だよ」


 宵の言葉を遮り、晃はにっこりと笑った。


「……大丈夫って何が?」

「宵の分の昼食、用意してもらっちゃってるんだよ、もう。だからおいで、せっかくだし親にも紹介したいし」

「紹介って……」


 まるで結婚を申し込みに行くみたいだ、と宵は焦る。

 晃の両親は志穂が入院していた病院て働いているため、まったくの初対面ではなかった。

 けれども晃の親として話したことはあまりない。まさか恋人だと紹介する気はないだろうが、なんとなく気恥ずかしかった。

 迷っているような素振りを見せる宵を招くように、晃は玄関のドアに手をかけた。

 そうしてもう一度振り返り、言う。


「行こう? 俺も簡単な挨拶だけしたら部屋に行くし」


 そこで晃は微笑を浮かべた。


「――今日でさよならするんだから、綺麗に片付けなきゃだもんな」

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