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Memory of Night2

第4章 同居


 晃の瞳は悲壮だった。

 いつもは優位な場所から人を翻弄してくるくせに、そんな顔は反則だと思う。

 そして自分も、少し前だったら平気で晃に拒絶の言葉を投げつけられた。

 傷つけるようなセリフを、構わず吐いていたのに。

 今は、胸が痛かった。

 宵は覗きこんでくる晃の頬に触れた。

 茶色い瞳を見上げ、小さく笑みを浮かべてみせる。


「……嘘だよ、迷惑なんて思ってねーっつの」


 言って、晃の頭を引き寄せた。

 髪をどけ、宵は晃の額に軽く口づけた。

 間近で茶色い瞳を見つめたまま、つぶやくように言う。


「……ただ、家族と一緒に暮らせるうちは、一緒に暮らした方がいいと思ったんだよ」

「わかってる」


 晃は小さく頷き、今度は晃の方から宵の唇にキスをした。


「宵の気遣いは嬉しいよ。だけど、どうせ家にいたって、一人で過ごすことの方が多いんだよ。そんなに変わらない。親にはちょくちょく顔見せにくるよ。それに、君だって結局志穂さんたちと一緒に暮らしてないんだから、似たようなもんだろ?」

「そりゃ、そうだけど」

「宵と一緒にいる時間が、俺は一番幸せ」

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