
あなたの為に背伸びして。
第1章 冷たくされるのは嫌い。
「今からあんたの部屋行くし、準備して待ってな」
カツン、カツンと雅哉のブーツが鳴る。響いてるから、多分建物の中だろう。今、アパートを出たのだろうか。
「来なくていい。寝かせて」
「そんなこと出来ないから言ってんのよ」
返事をすると、向こうからも予想通りの返事。ま、そりゃそうか。
雅哉は笑う。いつも言ってることだけ聞けば怒ってると思いきや、ニヤニヤしてるというか口調は軽い。
「何が楽しいの?」
「別に、何も?」
このやりとりだって、今まで何度繰り返したか。
ふぅ、と息をつくと、また寝転がった。真っ白な天井が私を睨み下ろす。眠気は引き続き私を襲う。もう休みたい。
「あと10分であんたのアパート着くから、着替えだけでもしときな」
そうして雅哉は電話を切った。あぁ、厄介だな。
