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あなたの為に背伸びして。

第1章 冷たくされるのは嫌い。

 


「ゆずー」




雅哉の声がする。扉を開けて玄関を覗くと、黒髪の好青年が…って、それが雅哉なんだけど。




そもそも10分って、こんな早いの?




「まだ着替えてないじゃない」

「今着替えようとした」

「嘘ばっかり」




嘘じゃない、と言うと嘘になるし、嘘だよ、と言っても間違いだし。




「着替えの為に今起きた」と言うのが正しいんだろうか。とにかく、雅哉が来た今…私に休むという選択肢は失われた。




「ほら、まだ2限まで時間あるから着替えちゃいなさい」

「はい」

「はいじゃない。うん、とかわかった、にしなさい」

「わかった」




雅哉は散らかった私のベッドに座ると、長い脚を組んだ。容姿端麗文武両道おまけにこんなに優しいのに、そのオカマな性格のせいで女の子にモテないんだ。




自分の黒髪にするりと指を通す。その姿はもう、二次元の世界。三次元じゃなく、イラスト。




姿見の前で私は服を脱いだ。上は完全に裸。雅哉がそんな姿を見たって興奮ひとつしないことくらい、知ってるからできることだ。




「んー、ブラは何処だ?」




上半身裸で部屋をうろつく私を見て、雅哉が溜め息をつく。


 

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