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あなたの為に背伸びして。

第1章 冷たくされるのは嫌い。

 


顔を上げると、たまに見る顔。




隣人のお姉ちゃんだ。




「おはようございます」




同じタイミングで、
同じ笑顔で、
当たり前の挨拶を交わす。




しかしこんな朝早くから、大変だな。
私と同じ大学生のはずなんだけど。




エレベーターに乗り込むとお姉ちゃんのシャンプーの香りか、甘い香りが私を包んだ。
何のシャンプー使ってんだろ?




袋から野菜ジュースを出し、ストローを刺した。ぷすり、と手に伝わる感覚は、こちらに来てからもう何度も経験した。




地元にいた頃はコンビニなんてない田舎だったからこうして気軽に物を買いに行くなんてこと出来なかった。ストローをくわえ、中身を吸い出した。




舌に乗る野菜独特の苦み、そして口に広がる甘さ。野菜ジュースは嫌いじゃない。手元を見ると、白いストローの外からもわかる鮮やかなオレンジ色が行ったり来たりをしていた。




やがてエレベーターはゆっくりと4階で止まった。ヴー…と低い音を立てて扉が開く。




キャッキャッと子供達の声がする。車の音もするし、朝のチュンチュンという鳥の囀りも。




都会の朝って感じ。


 

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