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覇者の剣

第3章 記憶

一人取り残された颯汰は、ズルズルと壁にもたれて座り込んだ。


「…はぁ、痛いとこつかれてしもたわ…」


颯汰はグッと奥歯を噛み締める。


「…きっついなぁ…」


できることなら、自分たちも換生などしたくない。
だけどこの世を支配しようとしている鬼神一族が換生を繰り返す限り、自分たちが阻止しなければいけないのだ。


だからずっと換生し続けてきた。
換生する肉体も慎重に選んだ。
武蔵が選んだ『須王颯汰』は、すでに生きる気力を失っていた。
颯汰はいわゆる視る人だった。
たまたま肉体を探していた武蔵に声をかけたのが颯汰だった。
武蔵と颯汰はお互いのことを話すようになった。


『あんなぁ、武蔵さん。ぼくの代わりに須王颯汰として生きてくれへんか? ぼくなぁ、好きな女がいてるんよ。でも病気で死んでしまった。ずっと一緒におるって、約束したんにな。せやからな、ぼくも死のうと思ったんや。あいつ、寂しがり屋やからな、ぼくが側におらんとあかんのや』


颯汰の代わりに武蔵が『須王颯汰』として生きていってほしい。そう、颯汰は言った。後悔はしないと。


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