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そばにいたい。

第3章 二人で水族館

「あ、遥斗!これこれ!イワシ!」

「うわぁぁ…ウジャウジャいる…すごぉい…」


円柱の中を銀色の小さなイワシがグルグルと渦になって泳いでいた。ライトが当たり、キラキラと輝いている。


「思ってたより、いっぱいいる…」


私が呟くと


「うん…!」


と、遥斗は食い入るようにイワシを見ていた。
キレイだなぁ…と呟く遥斗の顔に海水の揺らめく光と影が当たり、遥斗はこれまたさらにキレイだった。


「遥斗さん、次はお待ちかねのペンギンさんです!」

「わぁい!」


子供っぽい笑顔が、まだまだ子供なんだと、私に戒める。
私がしっかりしなきゃ、この子の保護者に名乗り出たんだから…しっかりしてても、遥斗はまだ10才なんだから!


「遥斗…」

「なぁに?」

「私、頑張るから!」

「え?何を?」

「遥斗との、これから…かな」


遥斗はジッと私を見つめる。


「じゃあ、ぼくも、がんばる」

「ん?」

「ぼくは、お姉ちゃんを守れる大人になるように…がんばる」


私はかがんで、遥斗と同じ目線にする。
ぎゅーっと抱き締めて、撫でる。

この子はホントにすごい。私よりずっと大人だ。でも、子供だ。


「うふふ、ありがとう、遥斗は良い子ね」

「すぐ大人になるよ!」


プウッとほっぺを膨らませる辺り、まだやっぱり子供だな。

行こう、と手を繋いで、私達はイワシの水槽を後にした。

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